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2011年2月

2011年2月21日 (月)

おそうじ

※これは或るクライアントのブログに載っていた文章です。

 ご本人の了解をいただきましたので、転載させていただきます。

 ちなみに、この方のカウンセリングはすでに終結しております。(光元和憲)

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私にとって、カウンセリングは心のおそうじだ。
ごっちゃっごちゃになった、いろんな事をカウンセラーと共に紐解いていく。
そうすると、「あ、この時は哀しかったんだ」とか、

「哀しんでもよかったんだ」と、知ることができる。
一人でできそうだが、信頼できる人との共同作業だからこそ
掃除ができる。
ひとつひとつ、出してきては一緒にみてくれる。
そして、それを手放すか私が決める。
少しずつ、感じないようにしていたり、大したことないと
思っていた気持ちを、「あー、あの時嫌だったんだ」とみてあげる。

先生は、「名前をつけてあげる」といっていたっけ。
私のそうじも少しずつ進み、自分の気持ちを自分でみることが
少しずつできつつあるのかな。
以前、カウンセリングの時、またもや突然
「私、最低なんです。みんな必ずいいとこあるのに、
やっぱり根っこが最低な人間っているんです」と言った。
そうすると先生は、「あなたが最低だと思ってる部分を
一緒にみる覚悟はできてるよ」と言った。
私はひとしきり泣いた。
心の掃除から、随分なところまできてしまった。
一緒のところに立ってくれる存在の大きさってよくわかんないけど、すごい。
結局、先生に私が最低と思う所を話したわけではない。
そういう自分のイメージだったわけだ。
掃除の共同作業もあと少しだ。

2011年2月16日 (水)

犬の絵皿――ひかりちゃん・のぞみちゃんとお母さんの対話

1.朝のお手伝い

朝です。朝いちばんに目を覚ますのは、いつもお母さんです。二番目に目を覚ますのは、妹ののぞみちゃんです。姉のひかりちゃんとお父さんはいつもお寝坊さんで、まだ布団で寝ています。

のぞみちゃんは三歳。朝のトイレを済ますとすぐに、のぞみちゃんは、台所で朝食の支度をしているお母さんのもとにやって来ます。

「お母さん、お手伝いする!」

「はい。のぞみちゃん、ありがとう。お母さん、とっても助かるわ」

「うん!」

「では、みんなのお皿をテーブルに運んで下さい」

「うん!」

2.お約束

ふだんお母さんは子どもたちに、ひとつの約束を伝えています。

「朝いちばんに起きてお着替えも済ませた人に、お母さん、お皿を配るお手伝いをしてもらいます」と。

のぞみちゃんはお母さんのお手伝いをするのが大のお気に入りです。

お皿は四枚。おそろいの白地のお皿には、一枚ずつ違う動物の絵が描かれています。犬とライオン、そしてカバとキリンの四つの絵です。

のぞみちゃんはお気に入りの犬の絵皿を、何よりもまず自分の席の前に置きます。それが終わると、みんなのお皿を配ります。「これはお母さん。これはおねえちゃん。これはお父さん」

のぞみちゃんは満ち足りた表情で、それぞれの席の前に、一枚ずつ絵皿を置いていきます。

そんなことをしているうち、姉のひかりちゃんも起き出してきます。

ひかりちゃんは五歳。毎朝お母さんから、朝ごはんの前に着替えを済ませるようにといわれていますが、朝寝坊のひかりちゃんは、いつもパジャマ姿で、テーブルに就きます。じつはひかりちゃんも、お気に入りのお皿は、犬の絵皿です。いつも妹に先を越されてしまうので、犬の絵皿がどうしても自分のものになりません。

3.早起きしたひかりちゃん

あるときひかりちゃんはとっても頑張って、朝、早起きをしました。いつもと違って、起きるや否やすぐにパジャマから普段着への着替えも済ませました。でも残念なことに、この日も妹のほうが先に起き出していて、お皿当番はいつも通り、のぞみちゃんになってしまいました。

するとひかりちゃんは、妹からお皿を取り上げ、きょうは自分が早く起きたから自分が配るんだ、とわがままをいいます。お皿を奪われたのぞみちゃんは、ワンワン泣きながら、姉に、お皿を返せと訴えます。

「のぞみちゃんが、先に起きたのー!」

「ひかりちゃん、早く起きたから、お皿配るの!」

ひかりちゃんは、今日はどうしも自分がお皿当番をするといってゆずりません。そのうちひかりちゃんもワーワー泣き始めます。のぞみちゃんもひかりちゃんも大泣きするばかりで、容易にはおさまりそうにありません。

4.困り果てたお母さん

ただただ泣き続ける子どもたちを前にして、お母さんも困り果ててしまいました。ふたりの子どもを前にして、お母さんはふたりの性格の違いを感じました。のぞみちゃんは、自分と姉とを比較して、自分のほうが早く起きたと、関係を取り上げていますが、他方でひかりちゃんは、ふたりの比較という視点、関係という視点がなく、ともかく今朝、自分は早く起きて着替えも済ませたのだから自分に権利があると、自分の主張をするだけです。

たしかに約束上は、のぞみちゃんが正しい。でも他方で、今回頑張って早起きし、しかも着替えまで済ませたひかりちゃんの頑張りを認めてあげたい。ここで認めてやらず、「約束は約束だから、今朝もお皿配りはのぞみちゃんね」といってしまえば、ひかりちゃんの頑張りの芽を摘んでしまう結果になりかねません。

5.ひかりちゃんとお母さんの対話

ふたりの子どもそれぞれを、精いっぱい大事にしてやりたいという思いのなかで、お母さんが考えたことは、まずは泣きわめいているひかりちゃんを落ち着かせることでした。

とはいっても、泣きわめいているときのひかりちゃんに、外から親が何かいっても、ひかりちゃんには届きません。こんなときは、ひかりちゃん自身に考えさせるしかありません。怒りや悲しみといった感情は、いったん脇に置いて、論理的にひかりちゃんに考えさせるしかありません。

お母さんはひかりちゃんの手を取り、目をしっかり見つめて、語りかけました。

「ひかりちゃん、落ち着いて。ひかりちゃんが泣いていたら、お母さん、ひかりちゃんに協力してあげられないんだけど」

お母さんの言葉を聞いて、ひかりちゃんの泣き声がヒックヒックと、泣きべそ声に変わりました。

つぎにお母さんは、ひかりちゃんに、いつものお約束を思い出させました。

「ひかりちゃん、お約束はなんだっけ?」

ひかりちゃんは、泣きべそ声で答えます。「早く起きて、着替えた人がお皿を配る……」

「そうだよね。それで、今朝はどうだった?」

ひかりちゃんは沈黙です。お母さんが続けます。

「ひかりちゃん。たしかに今朝は、ひかりちゃんが早起きさんをして、お着替えも済ませ、と~っても頑張ったってこと、お母さん、よ~くわかってるわよ。でも、今朝、いちばんに早起きしたのは誰だっけ?」

ひかりちゃんは、ようやく口を開きました。「のぞみちゃん……」

「そうだよね。のぞみちゃんが早かったんだよね。だから、のぞみちゃんがいちばん早起きしてお着替えもして、だから今朝はお皿当番だということは認めてあげなくては、ね?」

「……」

「でも、今朝はひかりちゃん、頑張って早起きしたんだよね。だからお皿配りたいんだよね」

ひかりちゃんは黙ってうなづきます。

「だからね、ひかりちゃん。そういうときは、相手のことを認めて上げて、その上でお願いするのよ。『のぞみちゃん、今朝はお皿当番、ひかりちゃんにゆずってください』ってね。わかる? ひかりちゃん?」

ひかりちゃんがようやく口を開きます。「だって、のぞみちゃん、お皿、貸してくれないもん」

「そうね。お願いするのだから、それはのぞみちゃんが決めることだよね。そこは認めてあげなくては、ね。でも、頼んでみるしかないんだよね。『お皿当番、ゆずってください』ってね」

「うん」と、声にならずにひかりちゃんはうなずきます。

「ひかりちゃん、自分でのぞみちゃんにいえそう?」

「ウ~ン……」

「そう。だったらお母さん、ひかりちゃんのお手伝いをするわね。ひかりちゃんのお願いを、お母さんからのぞみちゃんに伝えるわね」

「うん」

6.のぞみちゃんとお母さんの対話

へたりこんでいたひかりちゃんはようやく立ち上がり、お母さんと一緒に、さっきから仁王立ちしていた妹のそばに近寄ります。

お母さんが口を開きます。「のぞみちゃん。お母さん、これから、ひかりちゃんのお願いを、のぞみちゃんにお話するわね」

のぞみちゃんは黙ってうなづきます。

「きょうはのぞみちゃんがいちばんに起きてきて、着替えも済ませたから、きょうはのぞみちゃんがお皿当番だよね」

「うん」

「のぞみちゃんがお皿配るんだよね。それは、お母さん、よーくわかってるわよ。でもね、今朝はおねえちゃん、と~っても頑張って朝早く起きて、着替えもしてね。だから今朝はお皿配りたいんだって。だからきょうだけ特別に、お皿配り、おねえちゃんにゆずってあげてくれるかなあ?」

のぞみちゃんは考えています。

お母さんはもう一押ししてみました。「のぞみちゃん、頑張ってお皿配りゆずってくれたら、お母さん、のぞみちゃんのこと、ギューッてしてあげる」

のぞみちゃんが答えました。「いいよ~」

ひかりちゃんは照れた表情を見せながら、妹に感謝のことばを伝えます。

「のぞみちゃん、ありがとう」

「いいよ~」

お母さんは約束どおり、のぞみちゃんをギューッとしてあげました。

7. 頑張ったひかりちゃん

ようやく念願かなってお皿を手にしたひかりちゃんがお皿を配るのを目にして、お母さんはびっくりしました。なんと、ひかりちゃんは、大好きな犬の絵皿を、妹の前に置いてやっているではありませんか。

のぞみちゃんも、これにはちょっと驚いたようすで、一瞬ことばにつまりましたが、すぐに気をとりなおしました。「お姉ちゃん、ありがとう」

「いいよ~」と、ひかりちゃんも返します。

同じくお母さんも一瞬ことばにつまっていましたが、気をとりなおしました。

「ひかりちゃん、ありがとう! ひかりちゃん、と~っても頑張ってくれたのね。お母さん、ひかりちゃんが、妹と、そして家族みんなのために頑張ってくれているのが、よ~くわかるわ。お母さん、ひかりちゃんに、家族みんなのために頑張ってくれて、いっぱい いっぱい、ありがとうっていうわね」

ひかりちゃんに、あのいつもの照れ笑いが、なおいっそう戻ってきました。

8.何が起こったのでしょうか?

それにしても、ひかりちゃんのなかで、いったい何が起こったのでしょうか?

第一に考えられることは、ひかりちゃんとしてはおそらく、お皿配りを譲ってくれた妹に、お返し・お礼の思いをこめて、犬の絵皿をプレゼントしたのでしょう。のぞみちゃんは、姉が自分に犬の絵皿を譲ってくれることをアテにして、お皿配りの役を姉に譲ったわけではありません。それどころかのぞみちゃんは、姉が犬の絵皿を自分に譲ってくれることは考えてもいなかったことでしょう。ですから、「おねえちゃんが犬の絵皿を譲ってくれなくても大丈夫」という覚悟が、のぞみちゃんにはあったことでしょう。

自分の主張が、いささか根拠薄弱であることに、ひかりちゃんは気づいていたようです。根拠薄弱な自分の言い分を認めてもらったお礼を、ひかりちゃんはそっと妹に返したのでしょう。今回、妹の覚悟に支えられて、ひかりちゃんは、一歩成長できたようです。

第二に、ひかりちゃんとしては、お皿配りを譲ってくれた妹に、犬の絵皿をお返しすることで、お母さんに認めてもらえるかもしれないという思惑もあったのかもしれません。だとしても、お母さんは、ひかりちゃんのおこないに対して、「妹のために、犬のお皿をゆずるなんて、ひかりちゃんはホントにいい子ね」と、ひかりちゃんをほめてはいません。

お母さんがしたのは、ひかりちゃんのしたおこないは「お母さんにほめてもらうためのおこない」ではなく、「家族みんなのために協力したおこない」というふうにくくることでした。

同じく、のぞみちゃんがお皿配りを姉に譲れたのも、たしかにお母さんが自分の言い分の正当性をずっと承認してくれていたことが、背景にあるに違いありません。お母さんがわかってくれているから、そしてお母さんが困っているのもわかるので、のぞみちゃんは、姉を、でなく、お母さんを、助けてあげようとしたのでしょう。

たとえそうだとしても、ここでも肝心なのは、「お母さんに認めてもらうためのおこない」や「お母さんにほめてもらうためのおこない」としてくくることではなく、「ひかりちゃんもふくめ、家族みんなのためにしたおこない」としてくくることでした。

「お母さんがほめてくれるからするおこない」ではなく、「(たとえお母さんがほめてくれなくても)わたしが家族みんなのためにするおこない」へと子どもたちを方向づけるところに、ねらいがあります。

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